
©2019 HUMAN LOST Project.
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2019年11月公開の劇場アニメ『HUMAN LOST 人間失格』について、ネタバレを含むストーリーと感想についてまとめています。
太宰治の代表作『人間失格』を大胆に脚色したSFダークヒーローものという触れ込みですが、その内容や世間の評価はどのようになっているのでしょうか。実に興味深い作品です。
映画『HUMAN LOST 人間失格』作品情報

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【原案】
太宰治「人間失格」
【製作年・国】
2019年・日本
【監督】
木崎文智
【脚本】
冲方 丁
【声の出演】
宮野真守、花澤香菜、櫻井孝宏、福山潤、松田健一郎、小山力也、沢城みゆき、千菅春香
【本編尺】
110分
【作品概要】
「恥の多い生涯を送ってきました」
という一文で知られる、太宰治の「人間失格」。
太宰治の代表作ともとれる作品ですが、それを大胆に翻案した本作「HUMAN LOST 人間失格」は、カナダ・モントリオールの第23回ファンタジア国際映画祭にて、アニメーション部門今敏アワードの特別賞を受賞しています。
作品の中には、序盤から専門的な語句がセリフの中に含まれており、理解が難しい部分もあるので、まずはここにまとめておきたいと思います。
GRMP(グランプ):
全国民に投与されており、宿主の健康状態を維持する、万能医療ナノマシン。
合格者:
全国民の健康基準となる300人を越す人たち。
S.H.E.L.L(シェル):
国民の健康を管理し無病長寿を保障する国家機関。
文明曲線:
統計計算により予測される未来グラフ。
ヒューマンロスト:
全国民が繋がっているネットワークから外れてしまう現象。
インサイドとアウトサイド:
東京首都圏の中のあるエリア区分のこと。
アプリカント:
ヒューマンロストを起こしても体内の「GRMP」が暴走せず人の姿を取り戻した人間。主人公含め3人。
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映画『HUMAN LOST 人間失格』のストーリー!ネタバレ注意

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※ 本作は、原作と同様に、第1、2、3の手記で話が進んでいきます。
第1記
医療の革命的な進歩によって、人が死を克服した昭和111年の東京が舞台です。
環境を無視した経済活動と19時間労働政策の末に、GDP世界1位、年金支給額1億円を突破した無病長寿大国日本、東京。
主人公の大庭葉藏(宮野真守)はアウトサイドで薬物に溺れる少年で、唯一の友達とともにインサイドへと突入し、激しい戦いへと巻き込まれる。
自信と友達がロスト体になってしまうが、アプリカントのうちの一人である柊美子(花澤香菜)に助けられ、自分自身もアプリカントであることを知る。
葉藏は自信を一時的にロスト化できる能力であった。

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第2記
最近頻発しているヒューマンロスト化を生み出していたのが、アプリカントのうちの一人、堀木正雄(櫻井孝宏)であることを知り、葉藏は正雄と会う。
そして正雄は言う。「進み過ぎた社会システムに全ての人間は失格した」と。
いずれは合格者たちにも寿命が来て、シェルシステムは崩壊し、全国民が死んでしまう。
だから先に全国民をロスト化させ、ナノマシンが投与されていない新たな人類での再スタートをさせることが正雄の目的だということを葉藏は知る。
正雄は葉藏と親しい人たちをロスト化させ、育て親を殺害する。
心身共に疲れ切った葉藏に対し、柊美子は、正雄のいうことは可能性の話に過ぎず、みんなが助かる道はまだほかにあるはずだと葉藏を勇気づける。
しかし、そこに襲撃した正雄に葉藏は心臓を奪われる。
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第3記
葉藏の心臓は再生されたのだが、意識は戻らないままでいた。
新たな合格者が発表される当日。
合格者たちは、アプリカントである葉藏の臓器を合格者たちに移植することでさらなる長寿化を目指すが、柊美子は反発し、自分の臓器を提供する代わりに、葉藏の臓器を使わない。ということを提案する。
それを感じ取った葉藏は目覚め、急いで柊美子を助けに行くが、時すでに遅し、柊美子はすべての臓器を合格者たちにとられ、帰らぬ人となっていた。
それと同時に、合格者の発表式に正雄が強襲。葉藏の心臓により力が増幅されたロスト化の集合体である怪獣が生まれる。
そのまま合格者達を襲うが、合格者も柊美子の臓器を得て増幅した力で抵抗、また柊美子の意思を次ぐ葉藏を駆けつける。

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しかし、柊美子が望んだ社会に合格者達が居なかったため、合格者達は次々に自滅していく。そして正雄に操られた柊美子の細胞を引き継いだロスト体が葉藏を襲う。
柊美子の精神と言う名の心臓を引き継いだ葉藏は、彼女が本当に目指した青空広がる世界を実現するべくロスト体を倒していく事を決意。怪獣を倒し、正雄を殺す。
最後、合格者が死滅し、S.H.E.L.L(シェル)が不安定になり、文明曲線が分からなくなってしまった社会で、柊美子の細胞を引き継いだロスト体含めてロスト体が急増してしまう。
葉藏は「恥の多い生涯を送ってきました。」と言いながら変身し、今日もまた世界を救う。
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映画『HUMAN LOST 人間失格』の感想と評価

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太宰治の代表作を思い切って翻案した、大胆さがうかがえる作品でした。知っている話なのに、まったく別のものを見ている気がする。そういった気分になりました。
『人間失格』が原案だとする先入観を持たずに鑑賞する方が、純粋に本作を楽しめるんじゃないかと想像しますが・・・。
世間の感想としては、これまで近未来や異次元を題材にしたアニメ(『AKIRA』や『シドニアの騎士』、あるいは『東京喰種』など)の世界観が好きな人は気に入るのではないか、との意見も見られます。
冲方丁が脚本を担当したこともあるのか、作風については『PSYCHO-PASS』や『攻殻機動隊』を重ねる人も多い様子です。
また、先述のように、太宰治の『人間失格』が原案だというキャッチコピーは気にしないのが無難だと思います。世間の感想の多くにも、
「オリジナルのSF作品として世に出せば良かったのでは?」
という意見が見られますし、個人的にも同様の思いです。
さて、例によって賛否はそれぞれですが、いずれにせよ本作独特の世界観や映像美は、それだけで一見の価値ありだと感じました。
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